痙縮に対するボツリヌス治療(ボツリヌス療法)

痙縮(けいしゅく)とは?

脳卒中、脳外傷、脊髄損傷、脳性麻痺などの後遺症としてみられる「痙縮」は、筋肉が無意識に緊張してつっぱり、動かしにくくなる状態です。手足がこわばって動かしにくい、姿勢が保てない、服の着脱が困難、痛みがあるなど、日常生活にさまざまな支障をきたします。

例えば、脳卒中後の患者さんには、3か月後には約20%、6カ月後には約40%の患者さんに発症するという報告があります。(Sommerfeld 2004, Urban 2010, Ryu 2019) 日本では、厚生労働省の令和5年(2023年)患者調査によると、脳血管疾患の総患者数は188万4千人(男性101万9千人、女性86万5千人)と報告がありました。その約4割に痙縮が発症すると仮定すると、脳卒中後痙縮患者数は約75万人/年となり、治療を必要とする人はそれより少ないとしても、実際、痙縮に対する治療を受けている患者さんはかなり少ない印象です。

理由を推測すると、ボツリヌス療法を実施している医療機関が限られていることや、治療そのものを知らないということ、また、費用面で難しいということが挙げられそうです。当院では、治療できるかどうかの相談も随時受け入れいます。

痙縮の問題点は、本人の障害だけでなく、介護者の障害にもつながります。

痙縮に対するボツリヌス治療とは?

ボツリヌス治療は、ボツリヌス毒素(Botulinum toxin)を痙縮を起こしている筋肉に注射することで、筋肉の過剰な緊張を一時的にやわらげる治療法です。

  • 作用開始:注射後3〜7日で効果が現れ始めます
  • 効果持続:およそ3〜4か月
  • 繰り返し治療:年に3〜4回の継続で効果を維持

*美容目的のボツリヌス治療は保険適応外です。当院では実施しておりません。

対象となるかた

次のような症状があるかたは、ボツリヌス治療の適応となる可能性があります。

  • 脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)後に手が握ったままで開かない
  • 肘が曲がって伸ばしにくい
  • 足がつっぱって歩きにくい (足首が曲がりにくい、足首が内側を向いてしまうなど)
  • 装具が合わない

介護負担軽減や装具の装着補助としても有用です。

当院でのボツリヌス治療の特徴

  • リハビリ専門医が診察・評価を実施:経験豊富な医師が、神経学的評価と超音波ガイド下で安全に注射を行います。
  • 運動機能評価とリハビリの一貫治療:注射のみに終わらず、効果を最大限に引き出すために適切なリハビリを組み合わせて実施することも可能です。
  • 保険適用:医療保険の適用が可能です。

よくある質問(FAQ)

Q. 痛みはありますか?
A. 細い針を使用し、痛みは最小限に抑えられます。

Q. すぐに動かしやすくなりますか?
A. 効果は数日〜1週間かけて徐々に現れ、3〜4か月程度持続します。

Q. どこに注射するのですか?
A. 痙縮のある筋肉に、超音波などを用いて正確に注射します。腕・手・足など、症状に応じた部位です。

ご相談・ご予約について

痙縮にお悩みの方、ご家族・介助者の方は、まずはお気軽にご相談ください。
診察・評価のうえ、ボツリヌス治療の適応となるかどうかをご案内いたします。